福井県観光DX 『FTAS』を活用した生成AI活用モデル で検証した「mitsumonoAIの現場定着モデル」
成果の主因は「設計された生成AI」 定着の鍵は「運用設計」
「正直、どうすればいいか分からなかった」
これは、福井県観光DX実証事業でmitsumonoAIを導入した、ある第三セクター企業の担当者の言葉です。調査業務に膨大な時間がかかり、丸一日以上かけても「どこから手をつければいいか分からない」状態が続いていました。
私たちbasicmathは、2025年9月から2026年1月にかけて、福井県観光DXコンソーシアムの一員として、観光庁の令和7年度「観光DX推進による地域活性化モデル実証事業」に採択された取り組みの一環として、地域の観光事業者向けに生成AIスイート「mitsumonoAI」を提供する実証事業を実施しました。実証を通じて見えたのは、生成AIは単なる「業務効率化ツール」を超えて、思考のパートナーとして現場の視野を広げ、創造性を刺激し、自信を与えうるという可能性です。
https://kanko-dx.go.jp/case-study/2763/
実証事業の背景 なぜ福井の観光現場に生成AIが必要だったのか
4年連続採択と国際的な注目
福井県観光DXコンソーシアムが推進する取り組みは、観光庁関連事業に4年連続で採択されています。2025年度は「『FTAS』を活用した生成AI活用モデル」として「観光DX推進による地域活性化モデル実証事業」に採択されました。
この継続的な取り組みは国際的にも注目されており、2024年11月に開催された先進7カ国(G7)観光大臣会合の成果文書「AIと観光」では、福井県の観光DXが先進事例として取り上げられました。
十分に活用されていなかった観光データ
福井県では、県観光連盟が中心となり、独自のDMP(データ・マネジメント・プラットフォーム)である「FTAS」へ、県内の宿泊予約状況や観光客アンケートの結果といった、事業戦略の策定に極めて価値の高いデータを蓄積してきました。
しかし、これらのデータが存在していても、多くの現場事業者にとって十分に活用されているとは言えない状態でした。その背景には、専門知識の不足、専任担当者の不在と時間の制約、分析結果と実務の断絶といった課題があり、これらの課題については、下記の実証事業を通じて検証を行いました。

事業者が直面していた「3つの壁」
実証事業の事前ヒアリングで明らかになったのは、業種を問わず事業者が共通して直面している「3つの壁」でした。ここは、のちに「現場定着モデル(接続/対話/活用)」として整理される出発点でもあります。
「専門スキルが必要な画像制作、時間がかかる口コミ返信、複雑なマニュアルの要約など、人手と時間を要する定型業務」
鉄道事業者のケースでは、画像編集スキルがゼロの担当者がサムネイル作成に1週間を要していました。宿泊事業者では、口コミ返信に1件あたり10~15分かかり、丁寧な文章を作成するだけで膨大な時間が消費されていました。
「新メニュー開発、企画立案、PRイベントの検討など、最初の一歩を踏み出すためのアイデアが枯渇し、業務が停滞」
市役所職員からは「ゼロから企画を考えると時間がかかり、視点も偏りがちだった」という声がありました。他自治体の計画調査に多くの時間を費やしていたものの、自分たちの地域に合った形に落とし込むことに苦労していたのです。
「自分の考えが正しいか不安になる、客観的な意見が欲しい、議論を深める相談相手がいないといった、意思決定における孤立」
製造事業者からは「自分の意見を伝えても人によっては『それは個人の感想だ』と議論が進まなくなることがある」という切実な声が聞かれました。特に小規模な組織では、専門家に相談する機会も限られ、判断に迷う場面が多々あったのです。
mitsumonoAIとは 「3つの壁」を打ち破るための専門機能として設計された生成AIスイート
このような現場の課題に対し、私たちが提供したmitsumonoAIは、OpenAI、Claude、Gemini、Grok、Perplexityといった最新の複数モデルを活用し、35種類以上のAIエージェントやワークフロー(専門機能)を搭載した生成AIスイートです。実務の入口を広く取り、デジタルマーケティング業務に限らず、思考の壁打ち、事業立案、調査・分析、各種生成など幅広い業務を支援できるように設計しています。
mitsumonoAIの設計思想
mitsumonoAIの開発にあたり、私たちが最も重視したのは「AI初心者でも、専門用語を知らなくても、すぐに使える、誰でも使える」ということでした。
多くの生成AIツールは、効果的に使いこなすために「プロンプトエンジニアリング」のスキルを要求します。しかし、日々の業務に追われる現場の担当者に、そのような学習時間を求めるのは現実的ではありません。
そこで私たちは、「モデル」や「プロンプト」といった専門用語を一切使わず、「目的」に応じたエージェントとワークフローを用意することで、誰でも簡単に必要な結果を得られる仕組みを構築しました。
AI活用の最初のハードルである「何をどう質問すればよいか」という問題を解決するため、多くの機能では、専門的な指示を一から考える代わりに、画面に表示される入力項目(例:「自社サイトのURL」「レシピで使いたい食材」など)を埋めるだけでAIが必要な情報を理解し、高品質な出力を生成できるようになっています。
4つのカテゴリーと35以上の専門機能
コンテンツ作成(自動化・生成アシスタント)
口コミ分析・返信文生成、ファイル分析、画像生成(nano-banana-pro等の複数の最新モデルに対応)、SNS投稿文・メール文面作成、ブログ記事作成
企画・アイデア出し(アイデア創出エンジン)
レシピ開発シェフ、SNSプランナー、企画立案支援、新規事業アイデア生成、マーケティング施策提案
分析・リサーチ(戦略的対話パートナー)
Sensei AIによる壁打ち、SWOT分析、ペルソナ作成、競合分析、トレンドリサーチ
資料・マニュアル作成
マニュアル要約、FAQ作成、社内報作成、プレゼン資料骨子作成、議事録作成
特別な存在 観光DX推進アドバイザー「Sensei AI 佐竹正範」
中でも、本実証事業で特に注目を集めたのが、公益財団法人福井県観光連 観光地域づくりマネージャーの佐竹正範氏の知見を組み込んだ「Sensei AI 佐竹正範」です。ここでのポイントは、単なる“伴走支援の代替”ではなく、専門家の相談体験を「プロダクトの機能」として組み込んだことにあります。つまり、人が支援したから成果が出たのではなく、相談・壁打ちを必要とする業務に対して、相談できる仕組みをシステム側に実装した、という位置づけです。

従来の専門家相談の限界
従来、観光DXに関する専門的な助言を得るには、佐竹氏へのアポイント取得や勉強会への参加など、あらかじめ決められた時間内での相談が中心でした。当然、相談できる内容や時間には制約があり、「今すぐ聞きたい」「夜中にふと疑問が浮かんだ」といった場面では対応できませんでした。
AIによるコンサルティングの自動化
そこで私たちは、相談対応をAI化することで、時間や相手に制約されることなく、いつでも自分のタイミングで、思う存分相談や壁打ちができる環境を実現しました。
設計における最大のこだわり 「人となり」の再現
Sensei AI佐竹正範の設計にあたって、私たちが最も注力したのは、単に佐竹氏が保有する知識を回答として提示するだけでなく、佐竹氏本人の空気感や価値観、人となりが伝わるように配慮しながら回答するという点でした。
なぜこれが重要だったのか。
地域ごとに課題や解決方法が異なり、必ずしも唯一の正解が存在しない観光DXのミッションにおいて、画一的な正論を提示するのではなく、ユーザーの課題に寄り添い、伴走するAIとして気づきやひらめきを与える存在を目指したからです。
実証期間(10~12月)のログでは、週次セッション数が6.9~8.0で推移し、目標(2)を上回る頻度で相談・壁打ちが行われました。一方で、ユーザーに対して具体的な利用シーンや利用メリットを十分に分かりやすく伝えられず、利用促進に課題が残りました。
この経験から、今後は観光DXを推進する担当者など、ニーズが合致したユーザーへ焦点を当てた展開を検討していきます。専門家AIは「誰にでも使える汎用ツール」
技術的な特徴 ガードレール機能による安全性の確保
生成AIを業務で活用する上で避けて通れないのが、情報管理とセキュリティの問題です。mitsumonoAIでは、個人情報や機密情報を保護するため、独自のガードレール機能を実装しています。国際的なセキュリティ規格であるISMS認証(ISO/IEC 27001:2022)を取得し、事業者が安心して業務に活用できる環境を整えています。

導入初期の課題 AIを「自分ごと」にするために現場が直面した3つの壁
実証事業の目的は、AIを導入すること自体ではなく、AIを日々の業務に活かせる「パートナー」とすることでした。しかし、導入直後には、多くの事業者が以下のような壁に直面しました。ここが、「現場定着モデル(接続/対話/活用)」の中核です。

① 接続の壁 AIと自分の業務が、どう繋がるのか分からない
最初の壁は、AIという新しい概念と、目の前にある日々の業務とを、どう結びつければよいのか分からないという課題でした。心理的な距離感が、「機能が豊富でも、どれから手をつければよいか分からない」という戸惑いとして表れていました。
実証事業参加者の声
「『こういう悩みの人はこの機能』といった案内がないと、何を使っていいか選べないと感じた」(行政職員)
② 対話の壁 AIに意図がうまく伝わらない
次に、AIとの対話における課題です。ウェブ検索と同じ感覚でAIを使おうとし、生成AI特有の対話の仕方に戸惑いを感じるケースがありました。同じ質問でも毎回違う回答が返ってくることや、指示文のつもりが意図と異なる結果になることで、「自分の意図通りにAIが動いてくれない」という感覚が生まれます。
実証事業参加者の声
「同じ質問をしても毎回違う答えが返ってきてしまい、話がずれてしまうことがある」(宿泊事業者)
③ 活用の壁 AIの回答を、どう次のアクションに繋げるか分からない
最後の壁は、AIから質の高い回答を得たとしても、それを具体的な事業活動にどう活かせばよいのか分からない、という課題でした。
実証事業参加者の声
「自社の商品開発でAIを活用したいが、知識がない中でAIの回答をどう判断し、次の行動に移せばよいか悩むことがあった」(物販事業者)
これらの3つの壁は、生成AIの可能性を「日常業務」という具体的な文脈に落とし込む際、誰もが直面する本質的な課題でした。だからこそ本実証では、プロダクト側の設計(専門機能・入力項目・テンプレート・ワークフロー)に加え、運用設計(学びの場・導線・伴走・継続支援)を組み合わせて、壁を越えるためのモデル化を試みました。

実証概要 mitsumonoAIの機能を現場で解放するための運用設計(伴走・学習・継続支援)
登録ユーザー数100名以上という目標を大きく上回った一方で、実際に継続的に利用するユーザーは限られていました。この結果から、私たちは重要な学びを得ました。
「システムを提供するだけでは、定着しない」
ここでいう「定着しない」は、ツールの良し悪しではなく、導入初期に起こる接続/対話/活用の壁を越える導線が不足すると、どんなツールでも“使われない状態”に陥る、という意味です。そこで本実証では、操作説明に留まらない支援設計として、段階別の学習機会、個別伴走、継続支援を組み合わせました。
当初予定していなかった初級・中級・上級の使い方セミナーを追加で企画し、合計41回のセミナーを開催しました。
初級セミナー AIとは何か、mitsumonoAIの基本操作
中級セミナー 各エージェントの使い分け、効果的な質問の仕方
上級セミナー 複数機能の組み合わせ、業務フローへの組み込み
参加者のスキルレベルに応じた段階的な学習機会を提供することで、「分からないから使わない」という状況を回避しました。
ヒアリング対象の13社に対しては、個別セミナーの実施可否を確認し、希望者には完全カスタマイズの個別対応を実施しました。事業者ごとの課題や質問に即した説明により、「自分たちの業務にどう使えるか」が明確になり、より効果的なAI活用につながりました。
例えば、宿泊事業者には口コミ対応に特化したレクチャー、鉄道事業者には画像生成とSNS投稿の連携活用、市役所職員には企画立案とSWOT分析の組み合わせ方、そして観光DX推進担当者には「Sensei AI 佐竹正範」を使った戦略的な壁打ちの方法など、それぞれの業務に最適化した支援を行いました。
実証事業参加者の声
「全体セミナーは商業者向けの内容だったが、その後の個別セミナーでは実務に直結した情報を得られて有益だった」(行政職員)
「セミナーに参加していなかったので各機能の使い道が分からなかったが、個別ヒアリングで具体的な問題解決の例を伝えてもらい、ツールの可能性と価値が分かりやすくなった」(宿泊事業者)
一部の事業者とは定期的な電話ヒアリングを行いました。ツールの使い方だけでなく、潜在的な課題や日々の悩みを丁寧に聞き取り、AIを活用してどう解決できるかを一緒に考える「伴走」型の支援を重視しました。
事業者が困ったときにすぐ相談できるよう、mitsumonoAIにはチャット形式のサポート機能を実装しています。「こういうことをしたいが、どの機能を使えばいいのか」「どういう指示を与えればいいのか」といった疑問に対応し、立ち止まらない環境を整えました。
参加者に対して定期的にメールマガジンを配信し、新機能の公開情報、活用事例、セミナー開催日程などを継続的に発信しました。さらに、具体的な活用方法を紹介するブログ記事を継続的に発信し、セミナー内容を後から見直せる資料として共有するなど、事業者が自走するための学習環境も整備しました。
実証期間中も、ユーザーヒアリングを通じて課題や要望を把握し、継続的に改善や機能追加を行いました。
主な改善例
・事前質問の追加(AIで何ができるかが分かるように)
・UI/UXの簡素化
・エラーメッセージの改善
・レスポンス速度の向上
・新規エージェントの追加
例えば「レシピ開発シェフ」機能は、「どういう料理になるのか、盛り付けのイメージも同時に見たい」という現場要望を受け、参考画像まで一度に出力できるよう機能を強化しました。「自分たちの意見が製品に反映されている」という実感が、継続利用を後押ししました。

対話のコツ 「言語化能力」の重要性
「対話の壁」を越えるため、セミナーやヒアリングでは、基本的なプロンプト知識に加え、より本質的な考え方を共有しました。
それは、「AIの回答の質は、入力される情報の質と具体性に比例する」という原則です。
mitsumonoAIは、専門的な指示文を知らなくても高品質な結果を得られるように設計されています。しかし、そのポテンシャルを最大限に引き出すには、ユーザー自身が「何に困っていて、どうなりたいのか」を明確に言語化し、AIに伝えることが不可欠です。
実証事業参加者の声
「自分が何を分かっていないのか、何を聞きたいのかをAIとの壁打ちで整理できるようになった。他者に質問する前の準備として役立っている」(DMO担当者)
機能連携 AIの回答を「次の一手」に繋げる
「活用の壁」を越えるため、mitsumonoAI内の機能を連携させる具体的な業務フローを示しました。AIの回答を「点」で終わらせず、次の機能へと繋げて「線」にしていくプロセスです。
活用ステップ例
AIの分析結果を具体的なアクションプランに落とし込むための流れ
・自社SWOT分析アシスタントで自社の強み・弱みを分析し、SWOT分析の結果をクリップ機能で保存する。
・ターゲットリスト作成アシスタントを起動し、クリップした内容を基に具体的なターゲット顧客像を作成させる。
・ペルソナ作成アシスタントで具体的な顧客像を作り、そのまま継続してAIと対話し、新しい事業のアイデアを相談する。
「ネット検索で調査データを集め、それをファイル分析アシスタントに読み込ませて分析するという連携した使い方に『なるほど』と感じた」(行政職員)
どの機能においても、出力された結果を確認するだけで終わるのではなく、その結果に対して質問をしたり、要望をしたりと、AIとの対話を重ねることで、より課題解決に繋げることができます。
「最初の質問では標準的な答えが返ってくるが、質問を重ねると、踏み込んだオリジナルな感じの答えが返ってくる点がありがたかった」(行政職員)
導入効果 数字で見る劇的な業務改善(最大99%以上の時間削減)
実証事業では、登録ユーザー数100名以上の規模で運用を行いました。週次の利用は主に業務上の担当者を中心に継続して発生し、特に積極的に活用した13社に対しては詳細なヒアリングを実施し、具体的な効果を測定しました。

最大99%以上の時間削減を実現した事例
鉄道事業者 サムネイル画像作成 1週間 → 30分
時間削減率は99%以上。デザインスキルの民主化という意味でも、極めて大きなインパクトとなりました。
宿泊事業者 口コミ返信時間 10~15分 → 半分~1/3
アイデア創出の高速化
一般社団法人 PRシナリオ作成 半日 → 1時間
高度な分析業務の効率化
第三セクター企業 法務関連リサーチ 丸1日以上 → 約1時間
調査業務の効率化
市役所職員 調査業務の効率が3~4倍に向上
(市役所職員の事例 1時間で1自治体 → 3~4自治体)
金銭的価値も実感
実証事業では、時間削減だけでなく、ユーザーが感じた価値も重要な指標でした。

「月2万円相当のコスト削減」(一般社団法人のPRシナリオ作成)
こうした具体的な金銭換算により、個人の納得感を超えて、組織としての導入承認を得る際の説得力のある材料となりました。
単なる効率化を超えて 利用者のマインドセットの変化
しかし、この実証事業で私たちが最も印象的だったのは、数字では測れない利用者の変化でした。単なる作業時間短縮ではなく、高付加価値業務の進め方そのものを変えたという点です。
思考の深化と視野の拡大
「AIを使うことで自分一人では出なかった成果が出ると感じる場面はあった。自分一人の思い込みの範囲を超え、自分以上の広い選択肢や、抜けている視点をAIが提示してくれることで、領域を超えた成果が出せていると感じている」(行政職員)
自信の獲得と議論の促進
「AIからの客観的な指摘が入ることで、自分の意見を補完する情報を得て、さらに話を進めやすくなったと感じている」(物販事業者)
属人化の解消と業務の標準化
「(企画の台本作成で)メンバーによる説明内容のムラを無くし、品質を標準化できた」(鉄道事業者)
「AIは個人のスキルに依存しない部分があるため、業務の属人化を防ぎ、組織全体のスキル向上に繋がるという気づきがあった」(DMO担当者)
思考のパートナーとしてのAI
- 個人の興味から、組織の戦略へ
「本実証事業を通じて、社内全体でも『AIを活用していこう』という前向きな潮流が生まれた。これまで一部の社員が独自にChatGPT等を利用していたが、『個人の活用』から『部署・組織としての活用』へとフェーズが移りつつある点は重要な変化の兆しだ」(鉄道事業者)
生成AI時代の「おもてなし」とは何か
生成AIの進化は加速していますが、私たちは、AIが人間の仕事を完全に代替するとは考えていません。特に、観光業の本質的な価値は、旅行者がその場所で得られる感動や、人との交流といった体験そのものにあるからです。
私たちは、「AIは『おもてなし』を代替するのではなく、人が『本来のおもてなし』に集中するための時間を創出するためのツールである」と考えています。
これまで口コミの返信や資料作成、データ分析といったバックオフィス業務に費やされていた多くの時間を、生成AIが効率化します。そこで生まれた時間を、事業者は、お客様一人ひとりと向き合う接客の質の向上や、より魅力的な観光体験の創造といった、人でなければできない、本質的で付加価値の高い業務に再投資することができるのです。
人手不足や高齢化といった日本の観光業が抱える構造的な課題は、生成AIによって直接的に解決されるわけではありません。しかし、AIの活用によって業務の生産性を向上させ、限られた人材がより創造的で価値の高い仕事に取り組める環境を整えること。それこそが、これらの課題に対する最も現実的で効果的なアプローチです。
生成AIと人がそれぞれの得意分野を活かし、協働すること。それによって、日本の観光業は、より質の高い体験価値を提供する、新たなステージへと進化していくでしょう。
地域の未来へ
福井県観光DX実証事業は、私たちにとって単なる製品テストの場ではありませんでした。それは、地域の事業者と共に、生成AIが社会にもたらす価値を探求する旅でした。
「AIは、事業の可能性を最大化する戦略的パートナーへ」
これが、実証事業で得られた最も重要な結論です。

福井モデルから学ぶ、生成AI導入を成功させるための3つのステップ(プロダクト×運用の整理)
福井県での実証は、生成AIが観光業にもたらす大きな可能性を明確に示しました。しかし、その成功は生成ツールを導入したから得られたもの、ということではありません。業務に直結するよう設計された生成AI(mitsumonoAI)があり、その機能を現場で迷わず使い切るための運用設計があり、最後に成果を組織の意思決定につなげるための可視化がある。この一連のプロセスが揃って初めて、現場に定着し、継続的な成果につながりました。
最後に、これから生成AIの導入を検討するすべての観光事業者様、自治体担当者様に向けて、福井での経験から導き出された「成功のための3つのステップ」をご紹介します。
Step1 目的の明確化 なぜAIを導入するのか、ゴールを設定する
最も重要で、最初に取り組むべきことは、「何のためにAIを使うのか」という目的を明確にすることです。「便利そう」「効率化できるらしい」といった漠然とした期待だけで導入を進めても、現場は混乱し、AIは使われないままになります。
「日々の口コミ返信の時間を半減させ、生まれた時間で新しい体験プランを企画する」「データ分析に基づいた宿泊プランを3ヶ月以内に造成する」といった、具体的で測定可能なゴールを設定することが不可欠です。
そして、このゴール設定は、現場任せにするのではなく、必ず経営層が主導して行う必要があります。経営層自身がAIの有用性とリスクを理解し、導入によって何を目指すのかという明確な方針を組織全体に示すこと。それが、成功に向けた第一歩となります。
Step2 信頼できる伴走者と学びの場の確保 孤独にさせない支援体制
多くの事業者は導入初期に共通の壁に直面します。この壁を越えるために不可欠なのが、信頼できる専門家による伴走支援と、継続的に学べる場の確保です。
福井の事例では、全体セミナーで基礎知識を学び、個別セミナーやヒアリングで個々の課題を解決するという、段階的な支援体制が大きな役割を果たしました。生成AIツールを導入して後は事業者側に委ねるのではなく、いつでも相談でき、具体的な解決策を一緒に考えてくれる伴走者の存在が、心理的なハードルを下げ、AI活用への挑戦を後押ししたのです。
Step3 小さな成功体験の横展開 個人のスキルから組織文化へ
最後に、AI活用を個人のスキルで終わらせず、組織全体の文化として定着させるためのステップです。
最初から全ての業務をAI化しようとする必要はありません。まずは「口コミへの返信」「SNS投稿用の画像作成」など、特定の業務に絞ってAIを活用し、「これなら自分にもできる」「本当に時間が短縮された」という小さな成功体験を積むことが重要です。
そして、その成功事例を組織全体で共有し、他の業務にも応用していくことで、AI活用は一部の個人のスキルから、組織全体の文化へと昇華していきます。福井の事業者の中から「組織としてAI活用を進めたい」という声が上がり始めたのは、まさにこのプロセスが機能した証と言えるでしょう。
現場の声が、未来を創る
最後に、実証に参加いただいた事業者の皆様に心から感謝を申し上げます。皆様からいただいた率直なフィードバック、具体的な改善提案、そして何より新しい技術に挑戦しようとする勇気。これらすべてが、mitsumonoAIの進化の原動力となっています。
良かった点として挙げられた3つの声
・業務の入り口を高速化 0から1の情報収集、アイデア出しが迅速に
・目的別の機能が初心者にも有効 レシピ開発、SWOT分析など明確で始めやすい
一方で、課題と要望として挙げられた声
課題② 機能面の要望 地域特性を反映した提案、より厳しい意見の出力、Excel/PDFでのダウンロード機能、機能間の連携強化など
私たちは、現場の声を何よりも大切にします。現場の声は、最高のプロダクトの出発点です。
今回の福井での実証で得た知見は、地域事業者や中小企業をはじめ、生成AIの導入を検討するあらゆる組織にとって再現可能な学びになりました。
生成AIは、一部の先進企業のためのものではありません。設計と運用が揃えば、どの業種でも、現場に定着します。
AIに任せること。人が価値を出すこと。その境界を見極めるほど、サービスの品質は上がります。福井の実証が示したのは、その現実でした。
mitsumonoAIは、現場に定着するAI活用を一緒に作るパートナーでありたいと考えています。
mitsumonoAI公式サイト
https://mitsumonoai.com
mitsumonoAIブログ
https://blog.mitsumonoai.com/


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